この日をずっと待っていました、槇原敬之2年2ヶ月ぶりのオリジナルアルバム「LLovable People」。通算20枚目のオリジナルアルバムになりますが、過去にリリースされた名盤19枚をも上回る、大名盤がここに誕生しました。
僕は槇原敬之ファン歴22年。槇原敬之の作品に対する評価が甘くなるかもしれませんが、今作「Lovable People」だけは、自分が槇原敬之のファンだというのを差し引いても強く強くお勧めしたい作品。日本の音楽史に残る大名盤だろう。
新しい曲に対するアプローチ
今作を聞いて最初に感じたのは、音、歌詞のアプローチの仕方が、今までの作品とは違うと感じたことだ。これまでも、何回聞いても飽きない槇原敬之の世界を作り上げてきましたが、また新しい槇原敬之の世界ができたと断言できる、素晴らしい曲ばかり。
本人のコメントを聞くと、今作は今までよりちょっと客観的に見た視点から作ったというように、たしかに今までとは歌詞の印象が少し違うように感じた。どう違うか説明が非常に難しいのだが、今までの素晴しい槇原の歌詞がより一段と鮮明になったと言ったらいいのだろうか、スッと心に染み込んでくる。美しい映画を見ているような槇原の歌詞が、よりブラッシュアップされたような感じだ。そして、素晴しい槇原の歌詞を彩る音の世界。毎回新しいチャレンジをしてきた槇原だが、今までとは違う面白い音の作り方をしており、彼のファンでなくても、必ず心を揺さぶられるだろう。
とにかく全13曲、1曲足りとも聞き逃せない、新しい槇原ワールドを紹介しよう。
01.Theme for Lovable People
映画のオープニングのような印象的なインストゥルメンタル。このインストゥルメンタルに使われているメロディーは、最終曲「Alone」のメロディー。最後まで聞くと分かるが、最終曲Aloneがこのアルバムの大きなテーマなのだろう。
過去現在未来、すべてのものが時間を越えてこのアルバムに集まってくるような、素晴しいオープニング曲だ。
02.ミタテ
「Lovable People」最初の物語は、別れた人が教えてくれたことが今も生き続け、その人への感謝の気持ちを歌う曲。歌詞の繊細さと音の細やかさが、日本の春の素晴らしさを感じさせてくれる曲に仕上がっている。
1曲目からボロボロ涙が出てきて、心を鷲掴みにされるだろう。
03.Life Goer On〜like nonstop music〜
槇原流ポップスに味付けされたモータウンが、前向きな気持ちにさせてくれる応援歌。数々の失敗は君だけの宝物だよと、新しい生き方をする人の背中を押してくれるだろう。
04.可愛い人
槇原らしい打ち込みサンドが心地よいナンバー。思わず踊りたくなってしまうようなリズムが堪らない。生きることに感謝し、ありのままで生きる人を歌っている。
見た目で着飾るのではなく、本質的な姿がそのものが、その人だけ可愛らしさなんだ。
05.君の書く僕の名前
とってもくだらないような日常のワンシーンを描いているが、こういった形のラブソングは、この世にないのではないだろうか。とても微笑ましい場面を歌っているが、人それぞれ得意なこと不得意なことがあって、それを支え合うように生きているんだなと感じさせてくれる1曲だ。
06.鋭く尖った細い月
やってみて体験してみないと分からない。尖った心を持っている若者を歌った歌。昔は世の中に許容する部分があったと思うが、最近は何でも白黒付けすぎじゃないだろうか。尖った生き方を少しは許容していかないと、きっと退屈な国になってしまうだろう。
07.新しいドア
結果が怖くて、現実を見ずに蓋をするようなところが人間にはあると思う。よりより未来を生きていくために、背中を押してくれるナンバー。
「どんな風に生きるかは 僕らが決められる」
ちょとしたことで、僕らの未来は変えられるのだ。
08.Once Upon A Long Ago
ポールマッカートニーのカバー曲。カバーとは思えないぐらい、このアルバムにぴったりに仕上がっている。槇原の美しい英語の発音を聞くたび、また全編英語詞のアルバムを出してほしいと思ってしまうのは僕だけだろうか。
09.言わせてください
槇原敬之初挑戦の演歌。演歌といっても、槇原らしいポップな仕上がりになっているので、違和感なく楽しめるだろう。この曲の歌詞は、槇原そのものといってもいい内容になっている。長年のファンとしては、涙せずにはいられない歌詞になっている。槇原のファンになった日から今日までが、走馬灯のように蘇ってくるだろう。
僕も言わせてください「ほんとにありがとう。これからもずっとずっと、この命尽きるまであなたのファンでいます。」
10.Fall
イントロからビートを効かしたサウンドにテンションマックス。こういった曲をEDMと呼ぶらしいが、やっぱり槇原のダンスナンバーは最高だと思わずにはいられない。
平凡な日常に突然起こった行きずりの恋に揺れる心を歌う1曲。恋に落ちる前の緊張感と揺れる心を見事に表現した1曲だ。
11.Elderflower Cordial
槇原が愛してやまないケルト音楽。これまでもケルト音楽のエッセンスを取り入れた曲を作ってきたが、ついにこの曲で槇原流ケルト音楽を完成させたと行っても過言ではない曲だ。後半のコーラスが加わったサビを聞けば、君も歌わずにはいられないだろう。
「つーみおーわったあとで」
さぁいっしょに肩を組んで歌おう!
12.君への愛の唄
愛する人への想いを歌い上げたラブソング。どうしていいかは分からないけど、ただひとつ分かることは「君が幸せになること」自分の幸せより相手の幸せをひたすらに願う、槇原の歌の根底にあるテーマをピュアに書き綴ったナンバーだ。
13.Alone
フロンティアスピリットを表現した超大作。7分31秒という長さをまったく感じさせない魂の1曲だ。パーカッションの音が心の奥底から揺さぶり、後半のコーラスを聞くと、世界中の一人で何かに挑む人たちの声が聞こえてくるようだ。広大な大地に佇む一人の人間の生き様が、きっとまだ見ぬ誰かの生き方を変えるだろう。
困難な程向かう道が正しい証拠なんだ だって絶望は希望とかそういうのが嫌いだからさ
何かに立ち向かう姿をこんな風に表現するとは。この曲のメロディーは、1曲目のインストゥルメンタル「Theme for Lovable People」にも使われており、この曲が「Lovable People」という作品の根幹になる曲だというのが分かる。映画のラストシーンのようなこの曲を聞き終えてから、1曲のTheme for Lovable Peopleに戻ると、転生輪廻のような感じで、またこのアルバムの世界に戻っていくことができる。
是非アルバムリピートにして、再び「Lovable People」の世界に戻ってきてほしい。
聞けば聞くほど味が出る大名盤
今までの槇原敬之のアルバムもそうだったが、今作も聞けば聞くほど味が出るようなアルバムに仕上がっている。歌詞、メロディー、アレンジ、ミックス。すべてが完璧に組み合った大名盤「Lovable People」。この濃密な槇原ワールドを味わいにきてほしいと思う。
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