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僕がありがとうと思うように誰かもありがとうと思う世界

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素敵な接客をする君に心奪われた。君がいたらいいのに。どこかで期待している僕がいる。同じ値段を払うのなら君がいい。

たかがコーヒー一杯、たかがお酒一杯。
それ以上でも、それ以下でもない。

君は店員さん、僕はお客さん。
それ以上でも、それ以下でもない。

通う頻度が多いから、たまたまよく会うだけ。
それ以上でも、それ以下でもない。

商売だから、笑顔になるだけ。
それ以上でも、それ以下でもない。

勝手に勘違いをして、今日も僕はここにいる。

ささやかな幸せを感じた僕は店内を見渡す。

僕に見せる笑顔と同じ顔で君が接客をしている。
名前も知らない男の人が、笑顔で君と話している。

僕と同じように、彼も君のことが好きだろう。
好かれる人はみんなから好かれる。

君がいる日は、お店が輝いて見える。
勝手に僕の心が輝いているから、キラキラ見えるのだろう。

違う名前も知らない男の人が、君と笑顔で話す。
きっと彼も君のことが好きだろう。

僕らはたまたま店員さんとお客さんとして会っただけ。
それ以上でも、それ以下でもない。

そんな日々もいつかは終わるだろう。
ここで見ている君以外の君がある。
僕にもここにいる僕以外の僕がある。

君と話すときだけは時間が止まっている感じがする。
そんな気がするだけで時は流れている。

君の人生、僕の人生、名前も知らない男の人生。
人生を過ごした時間はそれぞれ違うけど、同じ早さで時は流れている。

君がいなくなったら、僕は違う人と笑顔で話すのだろう。
お客という立場を利用して、勝手に誰かを好きになって自分の心を救っている。

一人ではどうしようもない心を、たまたま会うだけの君に依存する。
ただ君がいつも通り笑ってくれるだけでいい。
それ以上でもそれ以下でもない。

名前も知らない君が僕を救う。
君に伝えることはないだろうけど、ありがとう。

僕が思うように、きっと誰かも思っているだろう。
ありがとうと。

 

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