岐阜県高山市。人口9万人の町だが、日本を代表する観光地のひとつでもある。街を散策すると、日本人以上に訪日外国人の姿が目につく。僕ら日本人より、日本らしさを感じてるのだろう。
そんな町で槇原敬之が初めてコンサートを開催した。40を過ぎても精力的にツアーを行っている槇原だが、ここ高山はでのコンサートは初。
コンサートが初なだけではなく、槇原自身も初めての高山。数日前より高山市に滞在し、高山をゆっくりと楽しんだようだ。
槇原もバンドメンバーも高山の町に溶け込んだことで、いつものコンサートにはない雰囲気が作られ、なんとも忘れがたい公演になった。
高山の町に新しい音楽を植え付けた、槇原敬之のライブをレポートしよう。
高山市民文化会館
高山駅すぐ近くにある
高山市民文化会館。2階席はなく、1階席しかないコンサートホール。ステージも大都市のコンサートホールより低く、ステージの奥行きも浅いため、いつも以上に槇原やバンドメンバーの距離が近くに感じた。
総席数1280人。人口9万人の都市で約1,300席ということは、70人に1人の高山市民が参加する計算になる。実際は他県から参加している僕のようなファンもいるため、もう少しパーセントは低くなるが、かなりの割合だろう。
槇原もMCで話していたが、乗車したタクシーの運転手が、「明日うちの奥さんがコンサートに行きますよ」と話すような小さな町だ。と小さな町だが、高山にはたくさんの名産品や風土があり、独特の文化がある。その高山を象徴するかのような素晴らしいホールが、高山市民文化会館だ。
客層を意識したセットリスト変更
すでに25公演以上行われている「Makihara Noriyuki Concert 2018 “TIME TRAVELING TOUR” 1st Season」。大まかなセットリストはどの公演も変わらないが、公演場所によって微妙に曲が変わっている。
今回の高山公演は、幅広い年齢層のファンを意識してか、中盤にじっくりと聞かせる曲を並べてきた。
アンコール1曲目で行っていた弾き語りをやめ、中盤で披露している「君は僕の宝物」の前にもってきた。中盤に弾き語りを持ってきただけではなく、歌う曲も変更。槇原を代表するラブソングの「ANSWER」をやめて「素直」を歌ったところに、槇原の思いやメッセージが込められているように感じた。
中盤の座って聞く曲の厚みを増やしたことで、後半のスタンディング曲は大爆発。他の公演とは違う構成に変えられるところは、トップミュージシャンで構成されたチーム槇原ならではだ。
いきなりスタンディング、そして大合唱
今回のツアーのオープニング曲が終わった後は、「まだ生きてるよ」でマッキーが登場。年齢が高い方も多かったが、いきなりのスタンディング。2曲目の「HOMEWORK」を歌い終わった後のMCで、初めて槇原敬之のコンサートに来た人?と槇原が聞くと、8割の人が手を挙げていた。様々な会場に足を運んできたが、ここまで初めての人が多かったことはないように思う。コンサート開演前にロビーにいる人たちを見て、地元の人たちが多いような印象を受けたが、そのとき感じたことは正しかったようだ。
いきなりのスタンディングだけでは終わらない。4曲目の「もう恋なんてしない」の「ほら朝食も作れたもんね」のあたりから、観客の歌っている声が聞こえてきた。槇原がいっしょに歌おうと言っていないのに、ここまで観客が歌っている会場は初めてだ。まだ4曲目なのに、高山熱すぎる!槇原と観客の2つの歌声が聞こえるとは予想もしなかったため、思わず僕の頬に涙が流れてしまった。
続いて歌った「僕が一番欲しかったもの」最後のコールアンドレスポンスも、楽々と歌い上げる高山のファンたち。意地悪なマッキーは、ひとつ音程を上げて歌うが、しっかりと音程を合わせてくるファンに嬉しそうだった。
中盤の構成を変えたのは先ほど述べた通りだが、会場の雰囲気がとても良かった。小さな箱で老若男女問わず、それぞれの聞き方で楽しむ姿は、小さなホールで行う音楽会のような雰囲気と言えばいいだろうか。都会では味わえない雰囲気が味わえるのも、地方公演の良いところだ。弾き語りの「素直」、アコースティックギター2つで演奏した「君は僕の宝物」では、槇原の美しい歌声が心に響き、涙で槇原が見えなかった方も多いだろう。
中盤のMCでは、槇原が高山で過ごした出来事が語られた。主に
クマ牧場に訪れた話だったが、他の会場とは違う、高山ならではのトークを聞くことができた。遠征してきた参加したファンも、いつもとは違った話が聞けて嬉しかったことだろう。
MCの後は、「濡れひよこ」を歌っていたが、まさかの「モンタージュ」。懐かしいシングル曲で、観客の心に火が付いた。いっきにオールスタンディング状態に。
「彼女の恋人」からはノリノリの曲でいっきに最後まで駆け上がるが、他会場以上の盛り上がりだった。これには槇原も想定外だったのか、「今日は色んな年齢の方が来ると思うので、あまり煽りすぎないようにしましょうってメンバーと話していたのに、こっちが反対に煽られちゃったよ!」と、アンコールのMCで話すほどだった。
後半最後は、「太陽」と「Such a Lovely Place」。「Such a Lovely Place」のギターソロの場面で、槇原がマイクを通さず何かを口ずさんでいた姿が印象的だった。槇原の歌声の力強さに、すべての観客が涙したことだろう。
アンコールでも歌う!
弾き語りを中盤に持ってきたことで、アンコール1曲目で披露していた「ANSWER」がなくなり、「遠く遠く」でアンコールが始まった。
出だしの「遠く遠く離れたいても、、、」から始まるが、ここは演奏もなく槇原の歌声だけのはずだが、観客席からも美しい歌声が。別れを惜しむかのように、「遠く遠く」の出だしから歌ってしまう高山のファンたち。たくさん槇原のコンサートに参加してきたが、「遠く遠く」の出だしから歌ってしまうのは高山が初めて。本当に彼の歌が好きなんだなと、最後まで思わされるコンサートだった。
「どんなときも。」をみんなで歌ってコンサートは終了。槇原の美しい歌声、バンドメンバーの高度な演奏。本物のライブを体感できて、きっと高山のファンも大満足だろう。
出待ちのファンたちが捌けた後、町はいつもの静けさを取り戻した。昼間は観光客でごった返す町も、夜になると一変。人通りは少なく、灯りが殆どない町になる。
変わらない町を守り続ける高山にこそ、普遍的なテーマを歌う槇原の歌があう町はないだろう。時代が過ぎても変わらない町に、時代が過ぎても色褪せない槇原の歌が宿ったコンサートだった。
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