ピピピピピ!いつもと同じアラームが鳴る。ベッドサイドに備え付けてあるAmazonのタブレットが僕を揺り起こす。
いつものようにスマートフォンを見ると、「お誕生日おめでとうございます!」という文字が見えた。企業から届いたメールを見て、今日が誕生日だったことに気付く。
いつからか自分の誕生日を忘れてしまうようになった。いっしょに祝う人がいなければ、これほど切ない1日もないだろう。
ベッドサイドの反対側を向くと、3台のスマートスピーカがー見えた。喋るスピーカーがちょっとしたブームになっている2017年。スピーカーから「お誕生日おめでとうございます!」ぐらい言えばいいのに。まだ機械のほうから、気の利いたことは言ってくれない。
とくに変わりのない1日が始まる。身支度を整えて、Apple Watchを装着した。
「Yuyaさんお誕生日おめでとう!」
まさか時計が誕生日を祝ってくれるとは思ってもいなかった。少しだけ人類は前に向かっているような気がした。
誰かに誕生日なんかと知られて、おめでとうなんて言われてはいけない。まるで逃亡者かのように息を潜めて街を歩く。もし「おめでとう」と言われても、どう返せばいいのだろうか。素直にありがとうと言うには、ありがとうと思える日々を過ごさないといけないようだ。
こんな日は、行ったことのないお店に行くのが一番。そこに自分が存在していないかのように、空気になれるお店がいい。
店内は混雑しており、女性ウェイターは忙しそうだ。これなら気を使われることはなかろう。
思ったより辛いカレーを食べ、汗が止まらない。忙しく動いていたウェイターが、新しいおしぼりを持ってきた。見つかるまいと息を潜めていたのに、逃亡者は見つかってしまった。
紙のおしぼりやセルフサービスのお店ばかりになってしまい、おしぼりを渡してくれることもなくなった。ただおしぼりを渡されただけど、なんか嬉しかった。
下手な誕生日プレゼントより、最高のプレゼント。
ひとつ歳も取ったし、このお店に通おう。
Happy Birthday to Me!
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