「マッキーありがとう!」
すべてのオーディエンスがそう思っただろう。3月20日の名古屋公演から約三か月月。日本各地でライブを重ね、歌、演奏、演出のすべてがブラッシュアップされていた。
前回の名古屋公演はツアー4公演目。それから30公演を経て、再び名古屋に戻ってきた槇原とバンドメンバーたち。前回の名古屋公演より、オーディエンスと槇原たちが一体となれる、より純度の高いコンサートに進化していた。
初めての人も、何回も参加している人も、同じように楽しめるのが槇原のライブの特徴だ。大満足の6月11日の名古屋公演の模様を、冷めない余韻に浸りながらレポートしよう。
セットリストの変更点
今回のツアーは、中盤の2曲以外は、すべて同じ曲。じっくりと聞かせる曲が並ぶ中盤で、季節や場所に合わせて曲が変わっている。
前回の名古屋公演では、「MILK」と「うん」を歌ったが、2回目の名古屋公演では、「君の名前を呼んだ後に」「PAIN」を歌唱。「君の名前を呼んだ後に」は、今回のツアーで初披露だったため、イントロが流れた瞬間に、驚いた方も多かっただろう。
続いて弾き語りの「PAIN」。弾き語りでPAINを歌っているという噂は聞いていたが、実際に聞くと、槇原らしいピアノの音を鳴らしつつ、圧倒的な歌唱力に脱帽。「ANSWER」「君は僕の宝物」を弾き語りで披露することが多いのだが、ラブソングではない弾き語りの定番として、今後も「PAIN」を歌っていってほしいと思うほど、素晴らしい弾き語りだった。
演奏もさらにパワーアップ
セットリストはほとんど変わっていないが、演奏は大幅にパワーアップ。とくに「PENGUIN」の始まり方は、別物といっていいアレンジに。槇原らしい民族音楽サウンドがより生演奏っぽいサウンドに。ギターとパーカッションでしっとりと始まったあと、テンポの早い手拍子が始まり、自然とオーディエンスと一体になる、素晴らしいアレンジだった。
他の曲もよりブラッシュアップされており、文句のつけようがない最高の演奏。難度の高いことを軽々とやってのける姿は、さすが日本トップクラスのスーパーミュージシャンたちだ。
6月11日の名古屋公演レポート
01.Introduction ~Believer’s Theme~
02.Tne Future Attraction
ツアー当初は、幕が上がりながら演奏が始まっていたように思うのだが、完全に幕が上がり切ってから演奏が始まる形に。薄いシースルーの幕の後ろにいる槇原たちの姿が見えると、オーディエンスは総立ちに。歓声と拍手が最高潮になったところで、演奏が始まりライブはスタート。
歌、演奏、照明。すべてがクールで熱いオープニングは、テレビ放送やDVDで何度も楽しみたい。
03.一歩一会
ライブでこの歌を聴いてから、より好きになった曲。CDで聞いていたときよりも、もっと歌詞の意味や、メロディーの美しさが身に染みてきた。この日を迎えるにあたり、何度も一歩一会を聞いたので、自然と涙が頬を伝う。ライブが終わった今も、聞くたびに涙が頬を伝う。
04.Souvenir~思い出~
ツアー開始当初は不安視されたこの曲も、見事に歌い上げていた。槇原の曲の中でも、一番言葉数が多くてテンポが早い曲のため、ちゃんとライブで歌えるかチャレンジする、「Souvenirアタック」をしていると、前回の名古屋公演では語っていたが、そんな遊びをしていたとは思えない素晴らしい歌唱だった。
05.遠く遠く
春は過ぎ、初夏のような日々が続く季節になっても、この曲が見えない花吹雪を描いてくれる。それぞれの故郷や青春や思い出しながら、大きく腕を振っていただろう。
06.運命の人
運命の人の前にあるMCでは、ビームスが作った衣装の紹介。槇原の衣装だけではなく、バンドメンバーも前方に呼んで解説。この日は、パーカッションの大石真理恵と、ベースの川崎哲平が選ばれていた。恥ずかしそうに前に出てくる真理恵さんと、男らしい哲平さんの姿に、虜になった方も多いだろう。
MCで一息ついたあとは、ゆったりと音楽を楽しむ時間に。槇原らしいラブソングの「運命の人」。運命の人ってタイトルなのに、自分の友達に恋をしている人に思いを寄せている歌というのが槇原らしい。
綺麗な照明と素晴らしい歌と演奏。ただ盛り上がるだけがライブじゃないんだと、僕らを優しく包んでくれていた。
07.君の名前を呼んだ後に
何回もツアーに参加した人は、ここで何を歌うのか妄想を膨らませていただろう。そんな僕らの予想を見事に裏切り、今ツアー初披露の「君の名前を呼んだ後に」を歌ってくれた。
あの印象的なイントロが流れた瞬間、固まって動けなくなったのに、目から涙を流したのは僕だけだろうか。美しくて伸びやかな槇原の歌声と、優しいバンドの演奏に、じっくりと曲に浸ることができただろう。
08.PAIN
バンドメンバーがステージからいなくなり、槇原がピアノのほうに歩いていくと、会場がざわついた。ライブでは中々見ることのできない弾き語りだ。
単調な音を繰り返して会場の空気を整えながら、さりげなく弾くメロディーは「PAIN」のイントロ。PAINの弾き語りを想像しても、どんな感じかイメージできなかったが、実際に体験した今の気持ちは、定番の弾き語りソングにして欲しい1曲だ。
ラブソングじゃない歌を、こんな風に弾き語りできるのは槇原だけだろう。
09.イカ大王体操第2
本当はこの曲を日替わりで会場によって変える予定だったかもしれないが、いつの間にか今回のライブの定番ソングに。いつからか振り付けもつくようになったこの曲。楽しい歌とちょっと変なダンスに、年齢を問わず踊ったことだろう。
10.テレビでも見ようよ
公演を重ねてきて、この曲もより深みが増していた。槇原の優しい歌声が会場を包む。老いたカップルの微妙な距離感を、テレビでも見ようよという形でまとめることができるのは、日常の何気ない場面を描ける、槇原ならではだ。
11.PENGUIN
ガラッとアレンジが変わった「PENGUIN」。右側のギター山本タカシがジャラーンと軽くバンジョーを鳴らし、パーカッションの大石真理恵が絶妙なリズムで手持ちの太鼓を叩く。民族音楽感溢れるイントロで始まったが、突然槇原がハイテンポで手拍子をする。会場のオーディエンスも手拍子を始め、PENGUINがスタート。
二人別々の道を生きることを選択したことを、正しかったと信じて生きる主人公。普通のラブソングでは描かれることのない切なさや痛みを、会場全体でひとつになることで、それぞれの想いで手を叩いていただろう。
12.You are what you eat.
ややアップテンポなアレンジになったように感じた。より自由にバンドメンバーが演奏するようになり、この後に続くライブの頂点へ、より入っていけるようになっていた。
13.不器用な青春時代
ステージの上が、ものすごいことに。ギャイーンギャイーン演奏しながら、自由に動き回るバンドメンバーたち。もう何でもありって感じの演奏。槇原だけではなく、バンドメンバーも激しく躍動することで、ライブの盛り上がりは最高潮!
14.信じようが信じまいが
以前の槇原のライブなら、この辺りで過去曲のアップテンポな曲を挟んでいたかもしれないが、今回のツアーは、最高潮に盛り上がるクライマックスは、すべてツアーアルバムの曲で構成。Believerというアルバムに対する自信や覚悟を感じた。
太陽から歌い続けてきたライフソングも、信じようが信じまいがのような、新しいライフソングになっていくのだろう。
15.理由
キーボードのTomi Yoがアコギをジャカジャカジャカと理由のイントロを演奏して始まった理由。圧倒的なサウンドと歌声に、会場のボルテージは最高潮に。こんなカッコいいサウンドの曲に、言葉で説明するのが難しいことを歌詞にするのが槇原敬之。
歌でしか伝えられない何かを、これからも歌ってくれるだろう。
16.超えろ。
今回のツアーグッズであるお面を、バンドメンバーが付けて演奏していた。冷静に見ると怖い気もするのだが、何事もないかのように演奏するバンドメンバーたち。お面で視界が塞がれているのに、キッチリと演奏するのはさすがの一言。
17.もしも
盛り上がったライブの最後を、これからの槇原の決意も感じる「もしも」で終える。映画のラストシーンのようなこの曲は、次へと続く始まりの歌なのかもしれない。
18.僕の今いる夜は
アンコールに応えて登場した槇原。「バンドメンバーを呼んだら、歌わないといけないじゃん」と、今日のコンサートが終わってしまうことを惜しむ槇原。そんなMCのあとに歌う「僕の今いる夜は」。
自分と同じ想いの人たちが集まっているのがライブ。自分が感じている痛みも、ここにいる人たちも感じているののかもしれない。この曲で、知らない誰かと分かり合えたような気がした。
19.どんなときも。
ライブを締めるのは「どんなときも。」。歌詞がよく分からなくても歌えてしまうのは、メロディーのおかげだろうか。どんなときも。を歌い終わった後に、最後に会場全体でコーラスをし、笑顔でライブが終わった。
20.足音(アカペラ)
バンドメンバーが前に出てきて終演の挨拶。これで終了のはずだが、絶妙なタイミングで会場から「もう1曲歌って」という声が。それを聞いたファンも大きく盛り上がった結果、「あいをひとーつ」と歌い始める槇原。最後の最後で、あんなに美しい歌声で歌われてしまっては、ただただ泣くだけ。隣で聞いていた屋敷豪太の嬉しそうな顔も印象的だったが、ステージ右袖に隠れているブースで仕事をしていた毛利泰士も、どんな音よりもその歌声が1番だよと言いたげな表情で、優しく微笑みながら見ていた。
バンドメンバーたちのあの顔が、今日のライブの全てを物語っていただろう。
世代を超えて楽しめるコンサート
以前から槇原のコンサートは、オーディエンスと演者たちが一体になるコンサートだったが、今回のBelieverツアーは、よりその傾向が強まったように思う。今回のコンサートツアーのテーマは「パンク」。今まで築いてきたもの一度壊し、再構築して新しい形を作っていきたいので、パンクにしたと語っていた槇原。その結果作り上げられたのが、誰が来ても楽しめる、オーディエンスと演者が一体となって楽しむ、純度の高い音楽のライブ。子供からお年寄りまで。世代を超えて楽しめるライブ。これからの槇原は、エンターテイメントで1番難しいことを、もっともっと突き詰めていくのだろう。
「Concert Tour2017"Believer"」も残り僅か。まだ槇原のライブに参加したことがない方は、次回以降のツアーに参加してみてほしい。きっと楽しい時間を過ごせるはずだ。
セットリスト
2017年6月11日(日)名古屋国際会議場センチュリーホール
- Introduction ~Believer’s Theme~
- Tne Future Attraction
- 一歩一会
- Souvenir~思い出~
- 遠く遠く
- 運命の人
- 君の名前を呼んだ後に
- PAIN
- イカ大王体操第2
- テレビでも見ようよ
- PENGUIN
- You are what you eat.
- 不器用な青春時代
- 信じようが信じまいが
- 理由
- 超えろ。
- もしも
アンコール
- 僕の今いる夜は
- どんなときも。
ダブルアンコール
- 足音(アカペラでサビのみ)
初日の神奈川公演レポートはこちら。
ツアーグッズレポートはこちら。
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